最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

 ーーやってやろうじゃないの。

持ち前の負けん気に火をつけられた私は猛然と手を動かした。ランチの時間を削って働き続け、三時には全て完璧にして社長のもとへ持っていくと、流石の社長も驚いた顔した。

 データを確認して、無言で考えること数十秒。

「メールで次の指示を送る。確認して」

 そして私の顔を見上げると、満足げな笑みを浮かべた。

「上出来だ」

 それからはありとあらゆる仕事が回ってきた。他人に仕事を回すのが下手なのかと思っていたけれど、なかなかどうして、こちらができるラインを見計らってその少し上くらいを狙ってくる。そうするとよくできたもので、初めは無理に思えてもなんとかしていくうちに仕事のキャパが増えていくのだ。本当は部下を育てるのが向いている人なんじゃないかと思う。

 しばらくしてお二人が出てきた。真彦社長だけはいつも社長が下までお送りするので、私はその場で立って一礼するのみ。

 戻ってきた社長は明らかに疲れた顔をしていて、通りすがりざまにお茶、と頼んでいった。
 最近の社長のお気に入りは近くのお茶屋さんで私が見つけてきたほうじ茶だ。値段はそうでもないのだけど飲み飽きない優しい味で、私が気に入って試しにお出ししたところ、社長の味覚にもあったらしい。
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