最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

 真木の大嫌いな三課長は、周りからとにかく評判が悪い。ただ厄介なことに上層部には気に入られている、ごますりと接待が得意な狸親父だ。

「そりゃいなくなりゃせいせいするけど、実際問題左遷は無理だろ、あの人副社長のお気に入りだし」

 真木は骨をぶんぶん振りながら持論を続ける。

「四課と三課ってやってることは結構似てるんだよ。実際オーバーラップしすぎてどっちが担当かわかんなくなってる部分もあるし。でも三課のほうが扱ってるものが専門的。知識が必要になってくるんだ。三課長は文系だけど、四課長は理系出身だろ? 四課長は気が弱いから三課長に押され気味だけど、話をしてもすぐ理解してくれる。こっちとしては大変やりやすい」

 四課長の頼りない風貌が思い浮かぶ。見るからに優し気で存在感もないけど、いつも筋の通った話し方をする人だ。

「トップをトレードして、四課と三課の線引きを明確にする。別にトレードしなくてもいいんだ、ただ今の四課のほうに理系の知識のある人間を寄せて、より専門性を高めれば」
「少なくとも開発と営業の間の軋轢は減るな」
「あ?」

 いきなり聞こえてきた自分に向けられたものであろう声に、顔を上げて私の頭上に目線を向けた真木の目の前で、スパンと襖が空いた音がした。
 
 大口を開けたまま目を見開いて固まるその顔は、せっかくの王子様ヅラも台無しの大変残念な間抜け顔だった。
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