死席簿〜返事をしなければ即、死亡
【矢井田ミキ】
「ムカつく‼︎」と吐き捨てながらも「はい」と返事をする矢井田も、頬を膨らませて怒っている。
【猪俣直樹】
「はい」
どちらかというと、あまり目立つほうではない猪俣だったが、あえて逆らうことなくすぐに返事をする。
【北野義雄】
「押忍‼︎」
北野の返事は気持ちがいい。
空を引き裂くような力強い返事は、空手部で培われてきたのだろう。条件反射で拳を握りしめ、体にも気合を入れるようだ。
【片平洋子】
「はい」
そう返事をすると、洋子が俺を見た。
その視線に含まれている意味合いはきっと、俺にしか分からない。
俺と洋子にしか分からない【もの】がある。
【和田カレン】
「はい」
日直に指名され、名前を書いたり消したりする和田の気持ちは痛々しいくらいに伝わってくる。
【楠木雷人】
今井の声が、俺の名前を呼んだ。
【く・す・の・き・ら・い・と】
でも俺は、返事をしない。
息を止めて、心臓が踊り出すのを待っていた。
あんなやつに、返事なんかしたくない。
あいつだけには絶対に__。
「雷人?」
洋子だけじゃない、他のやつらがざわめき出す。
「おい楠木、どうした?おい!」
小金沢が腕を掴んできてもまだ、俺は返事をしない。
あんなやつに従うくらいなら__。
「はい」
大きく息を吐き出し、俺は返事をした。