死席簿〜返事をしなければ即、死亡


江東が泣いている。


しゃくり上げて泣きながら、今井に手首を持たれて【北原麻美】と【久保明奈】を消し去った。


洋子を含め、4人で一つのグループだったはず。


「先生、もうやめて下さい‼︎」


これ以上は見てられないと、洋子が立ち上がった。


江東と同じように、涙を流している。


「じゃ、またお前が代わりに消すのか?」


「それは、でも。こんなこと、先生、先生は__」


「都合のいい時だけ先生呼ばわりするな‼︎」


そう言って思いっきり黒板を叩く音に、全員が身を縮めた。


それほど、今井の怒りが大きかったからだ。


乱暴に生徒たちの名前を消していく。


自分がこの世から葬り去った生徒たちを消し、数式の意味を証明していく。


江東奈美の手を引きながら__。


30名の3年1組。


どんどんと名前が消されていく。


「な、奈美⁉︎」


洋子が声を上げる。


答えの【16】まであと3人となったところで、江東に異変が起こったからだ。


声を上げて泣いていた江東の体が、小刻みに震え始めた。


短い呼吸を繰り返し、その度に引きつけを起こしたように体が揺れる。


誰かが言った。


「過呼吸」だと。


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