死席簿〜返事をしなければ即、死亡


「奈美‼︎」と、洋子が駆け出すより早く__。


「片平洋子‼︎」


今井の怒号にも近い声に、教室が凍りつく。


洋子の足も氷上に張り付いたように止まり、ただ江東の苦しそうな息遣いだけが聞こえてくる。


力なく「はい」と返事をするが、着席することなく今にも飛びかかっていかんばかりの洋子。


久保明奈に続き、友達を失いたくない思いが溢れていた。


しかし、今井は容赦なく名前を消していく。


【森本亜希子】


江東の顔から血の気が引く。


【米倉聖夜】


もう足に力が入らないのか、今にも倒れそうだ。


もし、もしあの状況で名前を呼ばれたら?


江東は返事ができない__。


【和田カレン】


そして最後の名前が消され、式が立証された。


【30一14=16】


【3年1組の生徒一今井に名前を呼ばれて死んでいった生徒たち=残りの生徒】


それがこの数式の意味なんだ。


今井が、掴んでいた江東の手首を離した。


ぼろ雑巾でも捨てさるように。


床に倒れた江東奈美は、口を半開きにしまま苦しんでいる。


今井は、そんな生徒を冷たく見下ろしたまま言った。


「江東奈美」


それは、死刑宣告だった。




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