死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「江東奈美」
名前を呼ばれてすぐ、江東は思いっきり上半身を仰け反らせた。
呼吸が完全に停止し、そのまま頭を打ちつけて、動かなくなる。
今井が、黒板消しを手にした。
【江東奈美】の名を、消したんだ。
「これで答えが変わったな」
空いたスペースに【15】と書き込み、俺たちのほうを振り返る。
誰も動けなかった。
目の前で起こった公開処刑に、心臓を冷たい手で鷲掴みにされたように__。
俺は真っ直ぐ黒板の文字を見つめていた。
【15】が、すぐに減るかもしれない。
今井は、俺たちに復讐している。俺たちを全員、なぶり殺すかもしれない。
その前に、なんとかしないと。
黒板の文字を消していく今井の背を、睨みつける。
早くしないといけない。
早くしないと__。
その時、チャイムが鳴った。
「日直、次の授業までに片づけておくように」
そう言って、今井が出ていく。
えっ⁉︎とみんなは顔を見合わせている。
洋子がなにか言いたげに振り返っていたが、俺はその向こうの黒板を睨んでいた。
今井は生徒の名前を消した。
それなのに__?
どうして、4名の名前だけが黒板に残っている?
どうして?