死席簿〜返事をしなければ即、死亡


「江東奈美」


名前を呼ばれてすぐ、江東は思いっきり上半身を仰け反らせた。


呼吸が完全に停止し、そのまま頭を打ちつけて、動かなくなる。


今井が、黒板消しを手にした。


【江東奈美】の名を、消したんだ。


「これで答えが変わったな」


空いたスペースに【15】と書き込み、俺たちのほうを振り返る。


誰も動けなかった。


目の前で起こった公開処刑に、心臓を冷たい手で鷲掴みにされたように__。


俺は真っ直ぐ黒板の文字を見つめていた。


【15】が、すぐに減るかもしれない。


今井は、俺たちに復讐している。俺たちを全員、なぶり殺すかもしれない。


その前に、なんとかしないと。


黒板の文字を消していく今井の背を、睨みつける。


早くしないといけない。


早くしないと__。


その時、チャイムが鳴った。


「日直、次の授業までに片づけておくように」


そう言って、今井が出ていく。


えっ⁉︎とみんなは顔を見合わせている。


洋子がなにか言いたげに振り返っていたが、俺はその向こうの黒板を睨んでいた。


今井は生徒の名前を消した。


それなのに__?


どうして、4名の名前だけが黒板に残っている?


どうして?


< 74 / 221 >

この作品をシェア

pagetop