死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「それでは、無罪だと思うものは手を挙げて」
軽く手を挙げて裁決を促す今井にならって、俺は手を上げた。
俺を含めて6票だから、世良は無罪のは、ず__?
「5票か」
「えっ?」
「有罪と同数だ」
今井の言葉に、驚いて後ろを振り返る。
手を挙げているのは、俺、小金沢、知念、水口、諸岡の5人だった。
どうして?
俺は、隣の洋子を唖然と見つめる。
唯一、手を挙げなかった、片平洋子を。
「ごめんなさい。でも、でも私、こんなこと間違ってると思う。こんなやり方、間違ってる」
言葉に詰まりながらも、洋子は訴える。
「人の命を、こんなことで決めるなんて、絶対に間違ってる」
と。
その横顔は、険しくも芯の強さが現れていた。
いじめられていたのは、俺たちじゃない。和久井だ。助けることもしなかった生徒たち全員、有罪に値する。そんな自分が1票を投じることに、違和感を感じでいるのだろう。
洋子らしいといえば、洋子らしいが__。
「最後の審判はやはり、いじめられていた和久井に託そう」
全員の視線が、被害者席に注がれる。
1番、強い眼差しを向けるのは、世良自身だろう。
和久井の1票によって、すべてが決まる。