懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
「ラナさん、どちらへ?」

「テッコーマン家。そっちの主人から説得してみるよ。ちょっと行ってくるわね」

「えっ!? 待ってください。あちらは、父以上に気性が荒いので……あ、ラナさん!」


テッコーマン家の主人を怒らせたとしても、今夜の宿を失うことはないので、今度はジュリエッタの制止も効果はない。

門から飛び出したラナは、通りを駆けて、時計塔のそびえる広場へ向かっていた。

人の賑わう場所まで行って、誰かにテッコーマン家の場所を尋ねるつもりだ。

町一番の鍜治屋だと、ジュリエッタが言っていたので、きっとすぐに情報を得られるだろう。


しかし、走りだして間もないところで、誰かがラナの足を無理やり止めた。

追ってきたのはカイザーで、「おい!」と彼女の腕を掴んだのである。


「暗くなろうとしているのに、勝手に出歩くなよ。護衛の存在をなんだと思ってるんだ!」

そう叱った彼は、眉間に皺を寄せている。


それに対してラナは、「こんな平和そうな町なら、ひとりでも平気なのに」と頬を膨らませて反論した。

すると「アホか」と呆れられ、「一番の危険は己の過信だ。注意を怠れば簡単にやられるぞ」と、真面目に説教されてしまった。


「もう、心配性だな。私の剣の腕前、知ってるでしょ? カイザーには敵わないけど、そんじょそこらの悪党にやられたりしない。逆にのしてやるわよ」

「お前の剣は俺の腰にある。素手で戦って勝てるのか?」

(あ、剣を預けてたの忘れてた……)

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