懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
ラナが彼女に背を向け、屋敷内に戻ろうと歩き出せば、「待ってください!」と引き止められた。


「あの、とてもありがたいお話ですけど、今夜はやめた方が……」

「なんで?」


足を止めて顔だけ振り向いたラナに、ジュリエッタは心配そうに指摘する。


「普段の父は温厚で明るい人柄なのですが、ロメオのことになると人が変わったように不機嫌になります。ラナさんがそれについて話せば、今すぐ出て行けと怒りだすかと……」


その注意に、ラナはハッとした。

宿が満室で泊まる場所がないからここにいるというのに、家主の気分を害して追い出されては困ってしまう。

自分とカイザーだけならそれでもいいかと思うけれど、オルガたちまで巻き込んでは気の毒だ。


「そうだね。説得は、明日、宿を確保してからにしようかな……」


そうは言ったものの、このまま客室に大人しく戻って寝られるほど、物分かりも諦めもよくないラナである。

それならばと、爪先を門のある方へ向けた。

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