懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
今回の口論の勝者は、どうやらカイザーのようである。

彼に対しては特に負けず嫌いなところがあるラナだが、口を尖らせつつも「ごめん」と渋々謝った。

ため息をついたカイザーが、「で、どこに何しに行くんだ?」と問うと、ラナは気を取り直して目的を伝える。


「鍜治屋のテッコーマン家だよ。あのね、ジュリエッタの恋人がーー」


先ほどジュリエッタから聞いたことをカイザーに話して、両家の主人を説得するつもりだとラナが意気込めば、「お前のやるべきことはそれじゃないだろ」と眉を寄せられた。

けれども、止められはしない。

「ま、お前のことだから、駄目だと言ったところでやめないだろうし、俺も付き合ってやるよ」と普通の調子で言った彼が、先立って歩きだした。


広い背中を瞳に映して笑顔を浮かべたラナは、彼に追いつき隣に並ぶと、心を弾ませる。

(やっぱりカイザーね。私のことを誰よりわかってくれるわ。隣にいて一番居心地のいい、大切な存在よ……)


空は茜色を消して、紫の帳が下りている。

ふたりはランプを持っていないので、足元が見えにくいが、広場近くの、宿屋を探した大通りに出れば、視界に不自由さを感じなくなった。

軒を連ねる酒場が、出入口や窓辺に明るい光を灯しているからだ。
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