懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
玄関から庭に出ると、そこにはもうコナヒキー家の主人の姿はなく、ジュリエッタだけが同じ場所に佇んで静かに泣いていた。

ゆっくりと近づいたラナが後ろから声をかければ、ジュリエッタは驚いたように振り向き、慌てて涙を拭う。

「ラナさん、どうしました? 客室に足りないものがありましたか?」と、彼女はぎこちない作り笑顔を浮かべて聞いた。


「ううん、部屋は快適だよ。ありがとう。そうじゃなくて、ジュリエッタが心配になってね。恋人との仲を反対されてるの? それはどうして?」


単刀直入に質問したラナに、ジュリエッタは目を丸くしているが、先ほどの一件を窓から見られていたのだとすぐに察したようだ。

彼女は眉尻を下げ、「変なところをお見せして申し訳ありません」と、恥ずかしそうに謝る。

それから「私は大丈夫です。気にしないでください」と健気に笑ってみせた彼女だが、ラナはかえって胸が締めつけられるような苦しさを覚え、ますます同情を寄せていた。


「ねぇ、話してごらんよ。一宿一飯の恩義というか、ジュリエッタの力になりたい。私たちって歳も近いし、友達に話すような感覚で、ね?」


ジュリエッタは迷っている様子で口ごもっていたが、ラナが真摯な眼差しを向け続けていると、周囲に誰もいないことを確認してから、声を潜めて話しだす。


「あの、実はーー」
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