Green Apple
再び思う。
山内は柔軟剤か、それともシャンプーか、
とてもいい匂いがする。
髪が伸びると、その分シャンプーも大目につけるからなのかな。
この匂いのせいか、俺は1人ぼやっと考え始めた。
*
「…………くん。」
「……くん!!!」
俺はぼーっとしていたらしい。
ふと、自分の名前が呼ばれたような気がして、俺は声の方に振り向いた。
山内がまっすぐ俺を見つめている。
心は正直らしい。
胸の鼓動が深く、ゆっくり鳴る。
(…目が潤んでいて綺麗だな。)
心臓がドキドキしながらも、とっさに思った。
本当に、可愛い。
転校初日、前に座っていた山内と目が合って以来の
久しぶりだ。
落ち着こう。
「何?」
冷静な自分を装って、余裕のあるフリをして、
俺は山内をまっすぐ見た。
ちなみに、今は1時間目が始まる3分前で、みんな席について喋っている。
「夏休みの宿題、ここだけするの忘れていて…。答え見ても解説ないから分からなくて。」
うわマジか。俺、頼られてる。
そうだ、こんなふうに頼られてみたかった。
と、内心喜びながらも
冷静に、冷静に…。
「どこ??」
落ち着いて俺は山内の方へ体を向ける。
距離が近くなった。
「ここなんだけど…。」
「……えーっと、途中式は順調に書いてると思う。ん?あっ、最後の小数点の付け方がおしい。」
「小数の筆算は苦手なんだよね。」
「簡単だよ。小数点の前の数字をさ……」
それから俺は得意の算数を色々教え、
山内には国語のコツを教えてもらう………。
きっとコツなんて、読書すればいいなんて言われるゆだろうな。
なんて、山内の答えを予想しながら
こうやって向き合って、時折目が合って、
偶然手が当たっちゃったりして…。
こんな夢みたいな瞬間が、
……あるわけないか。
今は1時間目の国語の時間。
マドンナ様が音読をしている。
なんでも子役のなんとかスクールに通っているらしいので、上手だ。
後ろには山内がいる。
何も音がしないから、きっと真面目に教科書を見ているのだろう。
妄想って言葉はなんだか変態みたいだ。
1人、考え事。
…俺って痛い奴だ。