真実(まこと)の愛
彼らとすれ違いざま、麻琴は軽く会釈した。
久城 礼子はにっこりと笑顔で応えてくれた。
もしこのような状況でなければ、
「こんなに綺麗な有名人なのに、全然エラそぶったところがないわね。きっと、いい人なんだわ」
と麻琴は思ったに違いない。
でも、松波がどんな顔をしているかはわからなかった。
なぜなら、麻琴が松波のことを一切見ていなかったからだ。
そして松波自身も、麻琴にいっさい、話しかけることはなかった。