真実(まこと)の愛

彼らとすれ違いざま、麻琴は軽く会釈した。

久城 礼子はにっこりと笑顔で応えてくれた。

もしこのような状況でなければ、
「こんなに綺麗な有名人なのに、全然エラそぶったところがないわね。きっと、いい人なんだわ」
と麻琴は思ったに違いない。

でも、松波がどんな顔をしているかはわからなかった。

なぜなら、麻琴が松波のことを一切見ていなかったからだ。

そして松波自身も、麻琴にいっさい、話しかけることはなかった。

< 124 / 296 >

この作品をシェア

pagetop