真実(まこと)の愛

「結婚したんですってね。お子さんも生まれたって聞いたわ」

麻琴はにっこりと微笑んだ。
二十代の頃にはなかった、落ち着いた内面からにじみ出るような深い笑みだった。

「淳……おめでとう」

だが、それと引き換えに、あの頃の溌剌(はつらつ)とした弾けるようなみずみずしい笑顔は影を潜めた。

芝田はふっ、と気の抜けた笑みを浮かべた。


「おれは今でも……『おれの妻』だと紹介できる女は、麻琴……きみがよかった、と思っているよ?」

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