真実(まこと)の愛
「あなた、先刻『三十四歳になる』って言ってたわよね?三十五歳超えたら、あっという間よ?
……わたし、来年で四十歳になるの」
とてもそうは見えないが、礼子は恭介と同い歳だからそうなのだ。
「これから子どもを産むとなると、正真正銘……リミット間際なのよねぇ」
いくら医学が進歩したからとはいえ、高齢になればなるほど、妊娠しづらくなってさまざまなリスクの確率が上がるのは、今も昔も変わらない。
「ねぇ、知ってる?『諸説あり』だけど、子宮が第一子出産に適してる年齢は十八歳なんですって。なんでも、産んでからの回復力が断然違うらしいわよ?わたしなんか、それから二十年以上も経っちゃったわよー」
そう言って、礼子は自虐的に嗤う。
「そういえば、従姉妹が第一子を二十代で、第三子を三十代で産んだんですけど、
『体力が回復しにくくてさ、産んだあとのしんどさが全然違うんだよー、麻琴ちゃん』
って言っていましたね」
麻琴は、従姉妹の七海が言っていたことを思い出した。
「さすがに、十八歳で第一子を産むのは早すぎますが、せめて二十代のうちには産んでおくべきだったかしら、とは思っています」
「あら、あなたもなの?わたしも、今となっては二十代の頃に一人くらい産んどけばよかったって、ちょっと後悔してるの。
……でも、そうなると恭介とデキ婚して、そのあと確実に離婚してたでしょうけどね」