真実(まこと)の愛

「この指輪はね、祖父が祖母のためにモニッケンダムでつくらせたそうだよ」

薬指に大きなダイヤモンドを戴かせた麻琴の左手の甲に、ちゅ、と恭介がくちびるを押しつける。
時を経たそのクラシカルなリングは、麻琴の洗練された華やかさにとてもよく似合っていた。

モニッケンダムはオランダのアムステルダムが発祥の地だが、のちにイギリスのロンドンに本拠地を移し、今では英国王室の王冠(クラウン)にダイヤモンドを供給するジュエリーブランドだ。
そもそもダイヤモンドカッティングの会社としてスタートしたモニッケンダムはその技術に定評があり、 世界三大カッターの一角を成す。

「麻琴さえ良ければ、結婚指輪もモニッケンダムにしようか?」

恭介が麻琴の耳元で艶っぽく(ささや)く。

……あ、それは……久城(くじょう)さんが「裏切り者っ!」って……絶対怒るだろうなぁ……

麻琴はうっすらと白い(もや)のかかった頭の中で、そう思った。

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