真実(まこと)の愛
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「……恭介君、巧くいったかい?」

コックコート姿の初老の男性が、階下に降りてきた恭介と麻琴を見て言った。
この店の主人(オーナー)だった。

恭介はがっちりと恋人つなぎしていた麻琴の左手を高らかに掲げた。薬指にはモニッケンダムのバカでかいダイヤモンドが瞬いていた。

……ちょ、ちょっと、恥ずかしいからやめてっ!

せっかく赤みが引いた麻琴の頬が、またぶり返しそうだ。

「あら、ヘレナさんの婚約指輪(エンゲージリング)ね?」

店主(オーナーシェフ)の妻のマダムがうれしそうに手を叩いた。

「おじさん、おばさん、
僕のfiancee(婚約者)の……麻琴です」

恭介は麻琴を抱き寄せ、改めて「紹介」した。

「もうすぐ同じファミリーネームになるから、名前で呼んでね」

そう言って、軽くウインクした。

……あぁ、もうすっかり外堀を埋め尽くされて、コンクリートでガチガチに固められてしまったような気分だわ。

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