真実(まこと)の愛
「松波先生こそ、うちの会社の非常勤の産業医をお引き受けになったんですってね」
麻琴が大輪の花が咲き誇る笑顔になって、
「ようこそ……わがステーショナリーネットへ」
ヒューガルデン・ホワイトのビアグラスを目の前で優雅に持ち上げた。
「えっ、なんで知ってるの?」
松波が、いたずらのバレた子どもみたいな顔になる。
「せっかく……サプライズにして驚かせようと思ったのに」
「青山さんの奥さま、ややちゃんからの情報です」
ふふっ、と笑った麻琴の方が、いたずらっ子の顔になる。
「……そうか、青山さんからの『紹介』だったからねぇ……仕方ない、か」
『うちにもそろそろ産業医が要るでしょう?
おもしろい医者がいますよ』
青山がそう言って、松波を社長の葛城 謙二に紹介したのが、そもそもの始まりだった。
すると、社長と松波が同じ中高一貫男子校の先輩・後輩だったことが判明した。
いわゆる「御三家」の一角を占める超名門校だ。
それからは、トントン拍子に話が進んで、あれよあれよという間に決まったのは言うまでもない。