真実(まこと)の愛
「……と言っても、来年で四十になるからねぇ。
別に、三十歳寸前でロンドンへ留学して『婚期』ってヤツに乗り遅れたことを後悔してるわけじゃないけどね。
でも、できればもうそろそろ、生涯をともにする相手と……とは思ってるんだよね」
松波はタリランドの縁を、節のしっかりした長い中指ですーっとなぞる。
「松波先生でしたら、わたしなんかよりもいくらでもふさわしい方がいらっしゃるじゃありませんか」
麻琴はボウモアのグラスに目を落とす。
松波のような容姿端麗で、しかも医師を生業とするハイスペックな男と「生涯をともに」したい女なんて、この人が属する「世界」には掃いて捨てるほどいるに違いない。
……そうよ。なにも、わたしなど相手にしなくても、生まれ育った「環境」の似通った人と、生涯をともにした方が絶対にいい。
「まさか……僕の家のことを気にしてない?」