真実(まこと)の愛
「あの……松波先生……わたし……」
麻琴が言いかけると、
「Sorry.」
松波から遮られた。
「“I’ve cared about you indeed,but…〈確かにあなたのことは大事には思ってるけど、でも…〉”っていう返事だったら。
……まだ、きみの口からは聞きたくないんだ」
松波が麻琴をぐっ、と見る。
半端ない目力だった。
「それに『昇進して働く環境が変わったからしばらくは仕事に専念したい』ときみが言いたいのであれば、それは僕の想定内だよ」
……うっ。
「ちょうど間のいいことに、非常勤とはいえ僕はきみの会社の産業医になったんだ。
きみの仕事についても状況が把握しやすくなったし、今まで以上に会えるようになるのは間違いないよ……だから、僕たちはきっと、もっとずっと親密な関係になれるはずだと、期待してるんだけどね」
……ううっ。
「だから、そういうことを『理由』にはしないでよ?」
……うううっ、図星だわ。
まさしく、麻琴はそれを「理由」にして断ろうとしていた。
……まぁ、わたしは彼のようなBBC Englishではないから、“I care about you so much,but…〈あなたのことはすっごく大事には思ってるわ、でも…〉”って言い方にはなるとは思うけど。
麻琴はそんなふうにまた意識を外に飛ばして、「現実逃避」してしまいそうになる。
しかしそんな思いも、怖いくらい真剣に自分を見つめる松波の視線を感じると、たちまちのうちに「現実」に引き戻される。
「……だからさ、もうしばらく僕がきみを待つことを許してくれないか?」