最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~

 はいはい。やはり、そう来ましたか。
 食事の度に、食べ方レクチャーをしなければならないと思うと、気が滅入る。
 でも、人間社会に出るにあたってマナーは大事だ。
 最低限の作法は教えないとな……と、謎の責任感が私を突き動かす。

「本来は、この箸と言う道具を使って私のような日本人は食事を食べるんですが、これは上級者向けの道具なので、エヴィさんにはフォークを用意しました」

 自分でご飯を食べるようになった赤ちゃんって、最初はスプーンとフォークを使う。
 生まれてこの方、丸呑みかご本箸の食生活を送ってきたエヴィエニスに箸は難易度が高すぎると考えたのだ。
 こんな私にも、雀の涙程度の「母性」は備わっていたらしい。
 エヴィエニスは手渡されたフォークを、物珍しそうに色んな角度から眺め、先っぽを指先でツンツンと触ってみたりしている。

「麺類は、大抵の場合、こんな風に熱々が売りの食べ物です。こんな風に箸で持ち上げて、フーフーと息をかけて冷まします」

 キッチンから持ってきたマイ箸で、麺を適量取ってフーフーと息を吹きかける。
 エヴィニエスも慣れない手つきで、フォークを持つと麺を取り上げ、フーフーと息をかけた。
 そうだ。なかなか上手いじゃないか。君、ラーメン食べる才能あるよ。
 吹いた勢いでスープの水滴が私の方に飛んできたけど……初めてだし、大目に見よう。

「それから、一気に啜って食べるんです。日本の麺食は、音を立てて食べるのが粋な食べ方だと言われています」

「すする?」

「こうやるんですよ!」
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