最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~

 無駄に勢いよく麺を口に含んで、ズズーッと一気に啜る。
 ツルンと口の中に納まった麺をモグモグと咀嚼する。
 なるほど……香り、味、麺の硬さと全てが私好みだ。
 うむと唸りつつ、コシのある麺を堪能しながら、さあ、次はお前の番だとエヴィエニスに目配せした。
 とは言っても、湯気で眼鏡のレンズが曇っているから視線はあっていない……と、私は思っている。
 私に見守られながらエヴィエニスは、意を決したのか、一気に麺を啜った。

「……こ、これは!?」

「え? ち、ちょっと……ど、どうしたんですか? まさか、カップ麺が暗黒龍の弱点突いた!?」

 私の声が届いていないのか、エヴィエニスさんは無言だ。
 麺やペッラペラのチャーシューに手こずりつつも麺を啜り続ける。
 容器を持ち上げ、スープを飲む。喉仏が上下する。
 最後の一滴まで飲み干すと、静かに容器をテーブルに置いた。
 完食と同時に蒼い双眸を閉じて、沈黙を貫くエヴィエニス。
 そのただならぬ雰囲気に、私は麺が伸びるのも忘れて硬直する。
 ああそうだと、湯気で曇ったレンズを拭こうと眼鏡に手を伸ばす。
 すると、カッと蒼い双眸が大きく開いた。
 エヴィニエスの薄くて、形の良い唇がゆっくりと開いていく。

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