ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「大人が作りたいって言い出したのか?」
実松くんの疑問に首を左右に振る。
「同席されていた五歳の男の子が、ご両親の昔話を聞いて秘密基地が欲しいって言い出して。それで作れるなら家に取り入れてみよう、って話になったの」
施主であるご両親はとても前向きで、部屋の壁を利用して子供部屋を二階建てにしてみるのはどうか、とか、家の中にツリーハウスを作る、とか、リビングにブランコを吊ってもいい、とか、どうせなら3階建てにしてみてもいい、とか。
アイデアを色々と出してくれた。
「待て。3階建ては無理だろ」
実松くんはそう言うと、隣の席に腰掛け、机の上に置いてあった資料を手に取り、周辺の状況を確認し始めた。
「ギリギリいけるか。でも、構造計算は?法規制もあるし、地盤改良もやり直しだぞ?もちろん金額も上乗せになる。却下だな」
「分かってる。だから他の案で実現出来るものがないか、急いで検討しなきゃいけならないの」
明後日の期日までに図面を起こさなければ、その後の工程に支障が出てしまう。
実松くんと話してる時間さえ惜しい。
資料を取り上げ、マウスを動かす。
そんな私を、実松くんは呆れたように見て言った。
「何事も焦るとロクなことにならないぞ。午後は建築中の物件を見に行くことになっているんだろ?時間ないじゃないか」