ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「着いたぞ」
実松くんに対する意識が変わった頃、停車したのは、閑静な森の中の日帰り温浴施設。
森林に囲まれた開放的な露天風呂と、和食中心のランチバイキングが有名らしい。
受付でバスタオル、フェイスタオル、館内着、館内履を受け取り、実松くんと離れ、女風呂へと向かう。
「うーん!気持ちいい!」
1月の露天風呂は当然寒い。
でも内風呂で十分に体を温めれば、むしろ火照った顔に外気の冷たさはひんやり気持ちいいものだ。
それに温泉なんて久しぶり。
日頃の疲れがお湯に溶け出していくかのよう。
ここなら病み上がりの実松くんにもちょうど良かったかもしれない。
髪を乾かし、簡単にメイクを済ませて浴室から出ると、館内着に身を包んだ実松くんの頬は血色よく見えた。
「お待たせ」
長湯してしまった。
コーヒー牛乳を飲んでいる実松くんの元に駆け寄るようにして近付く。
するとジッと見られた。
「なに?どこか変?」
館内着を見てみるも、特に変わったところはない。
確認するように実松くんを見ると、コーヒー牛乳が差し出された。
「好きだろ?」
「うん。ありがとう」
言わないでも分かるなんて、ほんと都合がいい。
久しぶりに飲んだコーヒー牛乳は甘くて美味しかった。
「ねぇ。やっぱりなにか変?どうかした?」
実松くんはコーヒー牛乳を飲んでいる間も、飲み終えた今も、私の方を見たり、キョロキョロ周りを見回したりしている。
しかも人の話は上の空で聞いていないし。
思い切って実松くんの視界に入るように近付いた。
そうすれば視線は合う。
なのに、それを避けるように目を逸らすものだから、もう一度聞く。
「なに?」
「いや、なんでもない。それより少し早いけどランチ行くか?それともエステにする?」
「エステ?」
聞き返すと、それが答えだと思われたのか、エステサロンの方へと誘われた。