ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
建築を建てるとなると、少なくとも数千万円あるいは数億の費用が発生するから、1つのミスが大きな損害となる。

それは事務所の問題で済むことではなく、お客様にとっての不利益となるわけで、実松くんの言う通りだ。


「でも、理想の家を叶えられないなら、わざわざうちのような個人の設計事務所に頼む必要ないんだよ」


個人の設計事務所は規格商品を持つハウスメーカーとは違い、仕様やプランの制限がない。

つまり、敷地の条件や施主のこだわりにあわせた家づくりに対応しやすく、建築家側もデザインや住み心地にこだわった住まいを提案しやすいのだ。


「ですよね?安藤さん」


私が確認を取ったのは、パーマのかかったロングヘアが垢抜けた印象を与えるイケメン。


「そうだなー」


曖昧な答えだけど、このイケメンこそ、35歳、若手ナンバーワンの実力と呼び声高い、一級建築士の当事務所所長、安藤晋さんなのだ。

安藤さんは『先生にぜひ建ててほしい』と高い設計料での仕事が舞い込むほど、建築界では有名で、ここ数年の間で数々の賞も受賞している。

それをきっかけに安藤さんを知り、憧れて弟子入りしたいと懇願する若者は多い。

でも、私が就職した時はまだそこまで有名ではなく、起業したばかりで収入が不安定な状況では、雇える人材は限られていた。

私が入社出来たのはひとえに安藤さんの親戚(再従兄妹)だからだ。
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