ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
ちなみに、なにかと口出しをしてくる実松くんは、ここの社員ではない。

実松くんは安藤さんが前に勤めていた大手ゼネコンの後輩で、一級建築士の資格を持つ営業マン。

見た目が良く、口達者で明るい彼は、顧客を捕まえるのが上手いとあって、安藤さんがお客様を回してくれるよう頼んでいるのだ。

だからこうしてたまに足を運んで来るのだけど、その度に小言を口にしていく。

出会って間もない頃こそ、仕事をもらう立場として、敬意を表し、敬語を使っていた。

でも『タメ口で良い、言いたいことがあるなら何でも言ってくれて構わない』と言われてから、堂々と実松くんに意見をぶつけるようにしている。

実松くんも同じ。

特に自分が持ってきた案件は意見を投げかけてくる。

今回の案件もそう。

『デザイン性を重視した建物を建てたい、女性建築家がいい』

その申し出があったからこそ、アトリエ系設計事務所であるうちに実松くんは話を回してくれた。

実松くんが属する大手ゼネコンは、マンションや大規模の商業施設、オフィスをメインに手掛けるため、個人向けの戸建て住宅や小規模な集合住宅などを手がけることがほとんどないから。

餅は餅屋。

だからこそ、任せて欲しい。
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