ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「きちんと期日は守るし、ミスもしない。信用してやりたいようにやらせてくれないかな?」
安藤さんが答えてくれなかったので、自分で実松くんに申し出る。
「ダメだ」
低姿勢に出ても実松くんは引き下がってはくれなかった。
「千葉が言うのは正論だ。でも、なんでもかんでも理想を聞いていたら金も時間も足りなくなるんだよ。困窮して誰が得する?必ずどこかにしわ寄せがくるんだ。ですよね?安藤さん」
「そうだなぁ」
それまで黙ってやり取りを聞いていた安藤さんは苦笑い。
事務所内にいて、私たちの話を聞いていた事務の平井梓さん(27歳、モデル歴ありのスレンダー美女)も困惑顔。
でも私たちは安藤さんの答えをジッと待つ。
すると、安藤さんはフッと小さく微笑んだ。
「どっちの意見もお客様のことを想ってのことだから間違ってないと思うよ。だから、そういがみ合うな」
「でも…っ」
納得いかない実松くんの口を手のひらを出すことで止めた安藤さんは私に向かって言った。