ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
及川さんは志摩くんのことがずっと好きだった。
好きだったからこそ、志摩くんの当時本当に好きだった人は私だと知っていた。
そんな及川さんは、10年振りに再会出来るチャンスを志摩くんに与えなかった。
それは志摩くんも了承していた。
「恭子に会ったら、気持ちが恭子に向いてしまう予感がしてたから」
そんな風に告白されると、さすがにドキっとしてしまう。
ただ志摩くんの話は終わっていない。
ミルクティーを飲むことで、気持ちを落ち着かせた。
「でも、恭子の知っての通り、俺は恭子に会いに行った。恭子の存在を及川もずっと気にしてたから、気持ちを清算するつもりだと彼女に伝えて、出向いたんだ」
それについては同窓会の日に聞いていたから知っている。
でも、詳しい理由は知らなかったから、腑に落ちた。
「ただ、それがなんで建築の依頼に繋がるの?」
「俺が恭子のことを褒めたから。『小学生の頃からの夢を叶えたんだって。すごいよな』って」
それは及川さんには言ってはいけないことだ。
小学生の頃、夢を語った私に意見したのは及川さんだったから。
それに、10年近く、私の存在を気にしていた及川さんのことだ。
志摩くんが私を褒め、さらに、夢を否定した人間が、夢を叶えたと知れば心中穏やかではいられなかっただろう。
「私に会う口実が欲しかったのね」
だから新築の設計を依頼してきた。
志摩くんの婚約者であることを知らしめたい想いもあったかもしれない。
「その他にも。いや、ここからは予想に過ぎないけど」
志摩くんは言いにくそうに話を続けた。
「及川は解約金が発生するギリギリのところで依頼を断るとか、SNS上で罵倒するとか、そんな類のことをするつもりでいたと思う」
「どうしてそう思うの?」
そう聞いたのは愚問だった。
10年も付き合ってきたんだ。
相手の考えくらい、お見通しなのだろう。
黙ってしまった志摩くんに別の質問を投げかける。
「どうして及川さんが勝手に私のところに連絡したって分かったの?」
「及川のご両親が、土地の権利書を渡してきたんだ。俺は婿に入るつもりだから」
そういえば志摩くんは3人兄弟の末っ子だった。
反対に及川さんはひとりっ子。
婿に入ることに抵抗はなかったのかもしれない。
そして新居も。
及川さんのご実家は土地持ちだ。
敷地内に建てる予定だとしても不思議ではない。