ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「でも俺は新築の話なんて知らなくて。及川を問い詰めたんだ」
その結果、私に依頼したことを知り、全てを察した志摩くんはこうして私の元へとやって来てくれた、という訳か。
「喧嘩になっちゃったんじゃないの?」
「元々、合わなかったんだよ」
10年も付き合っていて、合わないなんてことがあるのだろうか。
少なくとも、今の話を聞く分には、及川さんが志摩くんのことをものすごく好きなのだということは伝わっていた。
それなのに…
「あの時、恭子に会ったのは失敗だった」
ポツリと呟いた志摩くん。
その続きを黙って待つ。
すると、志摩くんは眉根を寄せ、弱々しく微笑んで見せた。
「やっぱり恭子のことが好きだ、って思ったんだ」
「なに言ってるの。結婚を決めたのはふたりでしょ?」
「結婚を決めてから、なんかすごく疲れるんだよ。及川の行動も鼻に付く。その度、恭子を思い出して、あぁ、やっぱり恭子の方がいいな、なんて思ったりする」
そこまで言うと、志摩くんは私を真っ直ぐに見て言った。
「この前、付き合ってる人はいないって言ってたよな?」
疑いの目を向けられた気がしたので、きちんと答える。
「あのあと、付き合うようになったの」
「そっか」
ため息交じりに言った志摩くんは、そのまま肩を落とし、黙ってしまった。
こういう場合、なんて言ってあげたらいいのだろう。
掛ける言葉がなくて、私も黙ってしまう。
そして結局、話すことがなくなり、実松くんのことも気になっていたので、そのまま、別れた。