ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「それってマリッジブルーじゃないの?」
実松くんを迎えに行くために事務所へ戻った。
その際、安藤さんに「他の男と何してんだ」と軽く怒られたため、志摩くんの話を安藤さん、平井さんにも話すことになった。
その答えが平井さんが言うマリッジブルー。
「結婚相手に不信感を抱き、結婚相手以外を気にするなんて、マリッジブルーっぽいわ」
「でも、マリッジブルーって女性のものじゃないんですか?」
実松くんの問い掛けに、平井さんは首を振った。
「大半は女性に対して使われる言葉だけど、男性にマリッジブルーがあってもおかしくないわ」
「そうだな。俺も多少なりとも結婚を決めたあとは不安になったもんな」
平井さんの意見に同調したのは唯一の既婚者である安藤さん。
全員の目が安藤さんに向く。
「いや、ほら、俺の場合は経済的な問題とか、生活の変化とか。そういうのに不安があったんだ」
独立して間もなかったから。
でも志摩くんは大企業に勤めているし、婿に行くにしても、10年も付き合って来た中だ。
志摩家と及川家はご近所さんのようなものだし、生活が一変するわけではない。
「恭子の同級生は、彼女でいいのか、って不安が大きいんだろうな。話を聞く限り、嫉妬深そうだし」
安藤さんの言う通り、今だに私のことを気にしている辺り、及川さんの独占欲と嫉妬心は半端ない。
きっと今までも、志摩くんに近付く女性を敵視してきたに違いない。
でも、こういう場合、なんてフォローしてあげたら良かったのだろう。
「ちなみに、安藤さんはどうやって不安を払拭したんですか?」
「俺?俺はそこまで思い詰めてなかったからな。でも結婚式の準備をする中で、周りの人に支えられているんだって実感したら、ひとりで背負う必要はないって思えたかな」
過去を思い返すように遠い目をしている安藤さんは、急にニコッと微笑んだ。
「あとは結婚式が楽しかった。感激した。それで完全に吹っ切れた」
「なるほど」
平井さんの小さな声が聞こえた。
もしかしたら、平井さんもマリッジブルーだったりするのかも。
そんなことをふと思った。
ただ、今は平井さんより志摩くん。
志摩くんより実松くんだ。