ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「ごめんね。遅くなっちゃって」
事務所を出てから、改めて待たせたことを謝った。
「気にしなくていいよ。それより、志摩のこと、なんとかしないと」
実松くんはそう言い、行きつけだというフレンチのお店に着くまで、なにかを考えるように難しい顔をしていた。
「そんなに実松くんが悩まなくても」
コース料理を頼んでからも、腕を組み、口を結んでいる実松くんに声を掛ける。
「志摩くんたちは志摩くんたちで解決するはずだよ。安藤さんみたいに」
他人が介入すべきことではないと安藤さんの話を聞いて思った。
まして私が出しゃばったら及川さんの気持ちを逆なでして、志摩くんに対する当たりが強くなりそうだ。
気にはなるけど、こちらからアクションを起こすべきではない。
でも実松くんの表情は変わらない。
難しい顔のまま。
「そんなに考えなくてもいいんじゃない?ふたりのことはふたりに任せよう?」
もう一度同じ言葉を口にする。
すると、実松くんはやっと視線を合わせてくれた。
「俺は恭子を奪われたくないんだ」
「え?」
私の話?
「ふたりに任せて破局したらどうする?志摩は恭子を奪いに来るだろ」
「それはどうかな。結婚を決めた仲だし。それに、仮にそうなったとしても、私は実松くんと別れるつもりないんだよね」
おしぼりで手を拭きながら、呟く。
それから話を続けるために実松くんの方を見ると、顔を背け、口元に手を当てていた。
「どうしたの?」
「たまにすごく可愛いこと言うから」
可愛いかは別にしても、また照れているようだ。
こんな些細なことで喜び、照れてくれるのだから、言った本人も照れくさくなる。
互いに恥ずかしくて俯く。
そこへウェルカムシャンパンと、前菜のカルパッチョが届いた。