ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「じゃあ、ひと段落ついたことだし、ランチでも行くか」
タイミングを見計らっていた安藤さんが声を掛けてきた。
「恭子も実松も、昼まだだろ?俺が設計したイタリアンレストランが先週オープンしたんだ。ご馳走してやるから付き合え」
安藤さんの最新作。
オープンの日を気にしていたのに、仕事に追われて行けてなかった。
ちょうどお腹も空いていることだし、時間に余裕も出来た。
行かないという選択肢はない。
「早くしろよ」
机の上に撒き散らした荷物を鞄に入れている私を実松くんが急かす。
どうやら実松くんも、安藤さんの最新作を見れるとあって、浮き足立っているようだ。
「実松くんは安藤さんの大ファンだもんね」
「当たり前だろ」
言うまでもないと言わんばかりの実松くんは、私に背を向け、安藤さんの方へと駆け寄って行く。
「あ!待って」
ハンガーラックに手を伸ばすと、平井さんがコートとマフラーを取り、手渡してくれた。
「ありがとうございます。あ、平井さんは行かないんですか?」
「私はもう先に見に行かせてもらったから。いってらっしゃい」
そういうことなら。
小さく会釈し、コートを羽織りながら事務所を出る。
「ちゃんと着てから出て来いよ」
実松くんに小言を言われたのは言うまでもない。
でも、私も安藤さんの大ファン。
逸る気持ちは同じなのだ。