恋を忘れた君に
絢人が助けてくれた一時は本当に幸せだった。
だけど、この頃から一緒に居る事が嫌になり始めて居た。
この頃の私は本当に嫌な奴だったと思う。
エスカレートする嫌がらせも、こんな状況も全て、絢人の所為だと、思う事も少なくなかった。
一緒に居る事を出来るだけ避け、関わりを少なくしていた。
その事に勿論絢人も気付いていた。
何度も嫌な思いをさせてしまい、不服そうな顔をしていた。
然し其れを良い事に、他の女子は絢人に手を振ったり、腕を組んだりしていた。
胸の中がチクりと痛んだけれど、此れで良いんだ、と言い聞かせた。
そんな生活を3か月くらい過ごした。
そして夏のある日、私は絢人に振られた。
それは当然の事だったし、私もすんなりと受け入れた。
拒む資格なんて無いと思ったから。
その日、体調不良だと先生に嘘を吐き、早退させてもらった。
家には自力で帰った。
自宅には誰も居なかった。
一直線に自室に向かい、ベッドに飛び込んだ。
制服がくしゃくしゃになるとか、そんな事に気を回している余裕はなかった。
布団に蹲り、泣いた。
もう、一生分泣いたんじゃないかというくらい、泣いた。
泣いていたら、気付いたら眠ってた。
すっかり夕方になっていたけれど、未だ誰も帰宅しておらず、取り敢えず制服を脱いでまた布団に潜り込んだ。
もう、一生目覚めたくない、と、一生目覚めるな、と願いながら眠った。
けれど、神様は残酷で、当たり前の様に目覚める。
丁度タイミング良く、ノック音が鳴った。
「夢?大丈夫?体調不良で早退したって聞いたわ。ご飯食べられそう?」
「・・・平気、だけど、ご飯は要らない。」
「そう、分かったわ。」
それだけ言うと母は出て行った。