俺様外科医と偽装結婚いたします

複雑ではあるが、お祖母ちゃんの言いたいことは分からなくもない。

元々はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんのふたりで回していたお店だ。

そこに、お嫁にやって来たお母さんが手伝い始めて、人数的な面での余裕が生まれた。

お祖父ちゃんは亡くなってしまったけれど、今は陸翔と私が入ったため人手は十分に足りている状態なのである。

陸翔には付き合っている女性がいる。

本人はまだまだ先の話だと笑っているけれど、結婚を強く意識していることは伝わってくるため、三年後どうなっているかは分からない。

嫁に来るなら陸翔の力となりここで働いてもらいたい。けど給料の面を考えてしまうと、人手を減らしたい。

となると、お祖母ちゃんの思うリストラ候補に真っ先に浮上するのが私で、今のうちに嫁に出して厄介払いをしておきたいとでも考えているのかもしれない。


「いなくなられては困りますね。コーヒーを飲みながら咲良さんとお話をする時間が、私の癒しとなっていますし」


お祖母ちゃんに「咲良と？」と笑われても、銀之助さんは寂しそうな表情を崩さず「えぇ。ファンなんです」と言葉を追加する。