アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】
この情報は偽りのない事実。実際、メディスンカンパニーは、合同会社の三十パーセントの株を保有する予定になっているそうだ。
「……分かりました。でも、本当のことを教えて大丈夫なんですか?」
「心配するな。メディスンカンパニーのCEOには、事情を全て説明してある」
そして愁は、正月の休み明けから合同会社設立発表が行われる今月下旬までアメリカに出張することになったと言う。
会社設立にあたり、各国の製薬会社の代表が集まって会社の経営方針や理念、方向性など、細部に至るまで徹底的に議論し、詰めることになったらしい。
「忙しくなりますね」
「そうだな……会議の進み具合にもよるが、向こうに行けば、合同会社設立発表ギリギリまで帰れないと思う」
そっか……長いな。
「それと、メディスンカンパニーのCEOとも話したんだが、合同会社設立の発表までに山辺部長の件はクリアにしたいと思っている」
「えっ? 発表までに?」
「そうだ。いつまでも山辺部長の件を長引かせるワケにはいかない。ただ、気掛かりなのは山辺部長と繋がっている内通者の存在だ。山辺部長を排除しても内通者が社内に居れば、後々また問題が起こる可能性があるからな」
「あの……だからそれは、根本課長じゃないんですか?」
私はまだ根本課長を疑っていた。だって、絶対に怪しいもの。しかし愁は私を冷めた目で見つめ「何度も同じことを言わせるなよ」と呆れ顔だ。