アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】


正月休みが明け、またいつもの日常が戻ってきた。


でも、愁が合同会社設立の為渡米したので、今の私は秘書課に詰めて栗山さんの補助やデスクワークをしている。と言えば聞こえがいいが、実際にはお茶くみと雑用がメインだ。


しかしそんな退屈な業務でも、根本課長を監視できるという大きなメリットがある。でも、根本課長のスマホが鳴る度に聞き耳を立ているが、今のところ収穫はゼロ。


ただ、どういうワケか正月休みが終わってからの根本課長はすこぶる機嫌がいい。そして機嫌がいい人がもうひとり。


「栗山さん、最近、楽しそうだね。なんかいいことあった?」


根本課長が席を外した時にそれとなく聞いてみると、栗山さんが笑顔で声を弾ませる。


「実はね、彼の夢が叶いそうなの」

「えっ、そうなの? 良かったね。で、彼の夢って? どんな夢なの?」


今までは、なんとなく聞いちゃいけないかなって遠慮していたけど、栗山さんがあまりにも嬉しそうなのでつい気が緩んで聞いてしまった。


栗山さんは一瞬、戸惑ったように視線を左右に振ったが「新田さんになら言ってもいいかな……」ってはにかんだ笑顔を見せる。


「彼の夢は、一国一城の主になること。彼にはそれだけの実力と才能があるの。なのに、色々クリアしなきゃいけない問題があって……でもね、それももうすぐ解決するんだ~」


一国一城ってことは、会社を興すか何かのお店を開くってことだよね。こういう場合、クリアしなきゃいけない問題ってだいたいがお金だ。資金調達のめどがついたってことなのかな?


あっ、もしかして栗山さん、彼の夢を叶える為に資金援助してるとか?

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