アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】

もしそうなら、なんか嫌な予感がする。でも、こんなに一生懸命、彼を支えようとしている栗山さんに、彼を信じて大丈夫? なんて聞くのもなぁ……


余計なことを言って不快にさせるのもどうかと考えあぐねていると、根本課長が戻って来てしまった。なので、栗山さんとの会話はそこで終了。結局、何も言えないまま、また課長の観察を始める。しかし――


今日も何もなかった……


やっぱ、給湯室での電話はたまたまで、普段は仕事中に山辺部長と連絡を取り合ったりはしないのかな?


マンションに帰り、リビングでひとり反省会をしていたら、翔馬から電話が掛かってきた。


『姉貴、頼みがあるんだけど……』


いつになく神妙な声の翔馬に不安を覚え、何かあったのかと訊ねると、一緒に会ってもらいたい人が居るとのこと。


『実はさぁ……早紀ちゃんのお兄さんに俺達が付き合ってるのバレちゃって、お兄さんに会いたいって言われたんだよ。でも、早紀ちゃんの友達の話しによるとお兄さんってクソ真面目でかなりのシスコンらしいんだ……』


つまり、そのクソ真面目でシスコンのお兄さんにひとりで会いに行く勇気がないので、私に付いて来て欲しい。そう言いたいんだな。


なんで私が……と思ったが、憔悴しきった翔馬の声を聞いているとなんだか可哀想になり、一緒に行くと約束してしまった。


『有難う。恩に着るよ。じゃあ、明日の七時に青山で。食事する店とか詳しいことはラインする』

「はぁ? 明日?」


もぉ~なんでギリギリになって言ってくるのよ。こっちだって心の準備ってものがあるんだから……

< 242 / 307 >

この作品をシェア

pagetop