フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
「——というわけですので、LEIKAさん」
ぼんやりと思いを巡らせていたわたしは、東氏から名前を呼ばれて思わず我に返る。
「はっ、はい」
「今日実際に拝見して、やはりこちらの洋館が私たちのイメージするドラマの『世界観』そのものでした。
企画が通ってドラマ化が決定しましたら、どうか撮影にご協力願えませんでしょうか」
「建物の外観とお庭はロケでそのまま使わせていただければありがたいですが、室内はスタジオでセットを組む予定です。
小笠原ご夫妻のプライバシーもおありでしょうから、家具や調度品などのインテリアは参考程度に止めさせていただく所存です。
インテリア関連の担当者は、何度か訪問させて室内を見せていただくことになるとは思いますが……」
——うーん、畳み掛けるように切り込んでくるな……
さすが元プロデューサーの企画部長と元ディレクターのプロデューサーである。
神宮寺先生の次回作が出版された暁の映像化の権利を、どうしても欲しい気持ちはわからなくもないけれども……
「そうですね……
でも、わたしの一存では決められませんので、主人と相談して後日ご連絡するということでよろしいでしょうか?」
わたしは当たり障りのない「とりあえずの返事」をした。
図らずも「主人」を言い訳に使うことができて、生まれて初めて小笠原に感謝だ。
「はい、ありがとうございます。
色良いお返事がいただけることを期待してお待ちしておりますよ」
そう言って東氏がソファから立ち上がると、他の二人も腰を上げた。
——やれやれ、やっとお引き取り願えるわ。
「あ、すいません。最後にもう一度、ローズガーデンを見させてもらって、少し撮影しても構いませんか?」
ところが、加藤氏が恐縮しつつも業界人の図々しさを発揮して申し出てきた。
わたしは苦笑しながら「構いませんよ」と応じた。
その後、辞去する彼らを玄関先まで案内する。
玄関を出て送り出せば、在りし日の祖母がご自慢だったローズガーデンのある裏庭を見るために、三人ともすぐに裏手に回るかと思いきや——
東氏と加藤氏が玄関ドアからエントランスに出たのを見届けたあと、風間だけがくるりと踵を返した。
——えっ……⁉︎
びっくりしたわたしは、呆然と彼を見る。