フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

そのとき、見知らぬ男性があわてた様子で割り込んで来た。

二十代後半のすらっと背の高い、割と端正な顔立ちの人だ。

「ちょっと、今日子さん、待ってくださいっ!」


「あーっ、おまえ……古湖社の何とかっていう編集者だなっ!?」

どうやら、神宮寺先生とは顔見知りのようだ。

「神宮寺先生、池原(いけはら)ですよ!
最近はすっかりご無沙汰ですが、以前弊社から先生の作品を出版させていただいた折には担当だったじゃないですかっ。名前くらい覚えていてくださいよっ」

「ふん、意地でも覚えてやるもんか」

だが、神宮寺先生の逆鱗に素手で触りまくってしまったらしく、超塩対応されている。


「——おい、もしかして、招待状のない今日子を連れて来たのは……おまえか?」

なるほど、同じ出版関係ならば招待状を融通できるに違いない。

「……で、いったい何の用だ。いきなり他人(ひと)のパーティに乗り込んで来やがって」


「そ、そうだった!」

池原とかいう編集者はハッと我に返ると、八坂 今日子に向き直った。

「きょ…今日子さんっ、離婚と同時に出版する書籍が全国の書店に配本されて平積みされる手筈になっているのをお忘れですかっ!?
情報解禁前ですよっ、契約違反ですっ」

「……また今度も、自らは一行も書かずにゴーストライターに丸投げした本を出版()して一儲けする気か」

神宮寺先生が八坂 今日子を心底蔑んだ目で見た。

そういえば、八坂 今日子は風間 優雅と結婚する際に自身の半生を綴った暴露本(エッセイ)を出版していて、その本が売れに売れてベストセラーになっていたはず——

「ゴーストライターだなんて……人聞きの悪いことを言わないで。『語り下ろし』と言ってちょうだい」

八坂 今日子は神宮寺先生に1ヨクトも悪びれずに言い放った。


——だけど『自らは一行も書かずに』っていうところは否定しないんだ……

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