フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
その後、通話を終えた小笠原は、
『急用ができた。この部屋は君の好きに使ってくれ』
と標準語で告げると、すぐさま部屋から飛び出して行った。
——わたしたち、一応「新婚初夜」なんだけどね……
翌朝、小笠原はトラブルを解決するために飛行機で発って行った。
(新婚旅行は彼の仕事がもう少し落ち着いてから、ということだったから無問題だ)
行く先は、大坂百貨店梅田店のある大阪かな?と思っていたら違った。
出店準備が最終段階に入っていた、中国の上海だった。
わたしがそれを知ったのは、小笠原が出国してから約一週間後、いきなりわたしのスマホにかかってきた彼の秘書からの通話だった。
——ふうん、そっちがそう来るんだったら……上等じゃん!
売られたケンカはきっちりとお買い上げするのが、江戸の昔からずーっと朱引内で生まれ育った正真正銘の「江戸っ子」だってのよ。
わたしは「夫」をガン無視することに決めた。
それから、彼の秘書とは一度だけ会ったけれども、それ以降は向こうからも何の連絡も来なくなり……