フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

数日後、わたしはホテルの一階にあるティーラウンジで彼女——武田 かおると会った。


ベリが丘タウン内の海岸「ベリが浜」に面した全室オーシャンビューの最高級ホテルだ。

結婚式の夜に出て行って以来「夫」が姿を現さないため、わたしはとっととこのホテルに移り、ラグジュアリー(クラブ)フロアにあるプレミアスイートに滞在していた。


どうせ、恋も愛もない政略結婚なのだ。

生家の江戸屋のために、わたしは自分の人生を「生贄」にして捧げるのだ。

なので、実はその「条件」として、結婚後はこのホテルのスイートを「別宅」として利用した際には資金援助してもらえるよう父に迫っていた。


婚約期間中でもデートどころか顔すら見せない、結婚したとしても戸籍上でしかない夫との「本宅」になんて、必要最低限住めばじゅうぶんだ。

そんな夫とがっつり同居する気なぞ、初めからわたしの頭には毛頭なかった。

(本当はベッドルームが複数あるインペリアルスイートが良かったのだが、さすがに父から「調子に乗るな」と却下された)


——櫻坂のオーベルジュでもよかったんだけどなぁ……

同じベリが丘タウンのノースエリア付近には富裕層(セレブ)御用達の会員制オーベルジュがある。

宿泊客でないと食べられない、めっちゃくちゃ美味しいフレンチ・イタリアン・ヌーベルシノワ、そして和食の料理店が揃っているのだ。

(父には「ふざけるな、おまえ何様のつもりだ」と吐き捨てるような声で凄まれ、とても血を分けた娘に向けるとは思えない冷酷非情な目で睨まれた)


ともあれ、父の監視の目がギラギラ光る実家から出られて始まった「ホテルライフ」はものすごーく快適だ。

生まれてこのかたやったことがない洗濯はランドリーに、掃除は客室清掃にお任せできるし……

食事は、このベリが丘タウンに住んでいればツインタワーやショッピングモールで世界各国のお味が楽しめるレストランが()り取りみどりだしね。

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