フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
わたしの声に、向かい側に座る武田 かおるがぴくっと反応する。
と同時に、わたしがこのテーブルに座したときからじっと見つめていたものから視線を外した。
彼女が見つめていた視線の先にあるのは——
わたしの左手薬指に収まった、結婚指輪だった。
婚約指輪と同じメレリオ・ディ・メレーの「アネル」というシリーズだ。
プラチナだったエンゲージとは異なり、イエローゴールドの地金で造られていた。
エンゲージと同様に小笠原が——というより「大坂百貨店」が、結婚式での新郎新婦の指輪交換のために用意したものと思われる。
五ミリもあるゴージャスな幅の割に、この指輪には圧迫感は感じられない。
そして、ゴールドのためプラチナのようなずしりとした重みもないから、着け心地がすこぶる良い。
もちろん、婚約指輪と同じくジャストフィットなサイズ!
さらに、骨格診断では「ナチュラル」のため長くはあっても関節がゴツゴツしてちっとも女性らしく見えないわたしの指が、なんと「華奢見え」するのだ。
おまけに、表面にフランス語だかラテン語だか、とにかく学のないわたしには読めない言語で彫られていて、一見するとマリッジには見えない。
デザイン性に富み、洗練されたファッションリングのようだ。
なので、いつの間にかわたしはこの指輪をつけっぱなしにしていた。
——別に……「気に入った」っていうわけでもないのよ?
『……小笠原室長より、伝言がございます』
武田 かおるは向かい側に座るわたしの目を見すえて、きっぱりと告げた。