フルール・マリエ


休日には千紘が感性を高めるためにたまに行なっているレディースショップを見て回り、店の雰囲気や女物の服やアクセサリーを見ながら女の人の心に何が響くのかヒントを得るようなことをしている。

仕事要素もあるが、手を繋いで一応デート要素も含んでいるつもりだ。


海外赴任の噂を聞いてから、千紘の様子を伺っていたけれど、特に変わった様子はなかった。

ただでさえ仕事中は表情が一定だから、わかり難いが仕事を終えて会っても特に何かを話してくれるような様子はなかった。

海外赴任するとしたら、千紘は私達の関係をどうするつもり?

私はいつ帰ってくるかわからない千紘を待っていることになるの?

「聞いてる?」

「え!?」

千紘が私の顔を覗き込んでいる。

考え事をしていて、全く千紘の声が耳に入っていなかったらしい。

「何食べたい?って聞いたんだけど」

「え、えーと・・・」

「何?なんか難しそうな顔してた」

「ううん、何でもないよ。あ、私パスタ食べたいっ」

1番最初に出て目に入った看板を指差して、話を逸らしたが千紘は少しの間、訝しげに私の顔を見てから正面を向いて店に入って行った。



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