それがあの日の夢だった
それからの一ヶ月間は何事もなくゆっくりと時が流れていった。

学校にも慣れ、麻弥ちゃんとの仲も深まり、お母さんが必死に働きお金に余裕も出来たため温かい布団に新調することも出来た。


そんな中で起きた、あの出来事は衝撃だった。



「ヒヒ様の元へ生け贄を捧げることが決まった」

担任の先生に聞かされたその言葉の意味が私には理解出来なかった。

生け贄?ヒヒ様?なんだそれは。

何かのドッキリだったらやめてほしい。

私はリアクションも下手くそだし、私は驚かされるのが苦手だからネタバラシのあと笑える自信もない。


しかし、クラスの人達の反応からするにどうもそのような雰囲気ではないことが分かった。

皆、辺りを忙しなくくるくると見渡して、その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。


先生は重い口をようやく開いた。

「みんな儀式は明後日やることになったらしい。村長の元にヒヒ様がいらっしゃって明後日やらなければこの町を滅ぼすと…」

担任の先生は嗚咽混じりに告げる。


クラスの喧騒の中、私の脳裏にはあの日のことが浮かんだ。


化け物に村を破壊されたあの日が。


私の鼻にあの血なまぐささがちらついた気がした。
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