それがあの日の夢だった
やがて松明を手にした上裸の男達が奇妙な歌を歌いながら町中を回り始めた。

私は松明の火で夜の町が明るく染まるなか、必死に、ただ必死に走り続けた。

麻弥ちゃん、麻弥ちゃんは!?

恐らく彼女のあの態度から察するにこの日の生け贄は麻弥ちゃんだ。

昨日の学校の勉強にも全く手がついていなかったように見えた。


もしかしてもう、勉強する意味がなかったからなのではないか?


どうせ、どうせこの儀式で生け贄にされて…。




息が苦しくなり、足に血が滲むくらい走り続けたが、麻弥ちゃんは見つからなかった。

冷静になれば確かにそうだ。
生け贄に選ばれた者が、待ちの中でうろうろしているわけがないし、仮にいたとしてもこんな広い町の中じゃ見つかる訳もなかった。








本当に、麻弥ちゃんが生け贄にされるのなら私はこの儀式を破壊してもいい。


大切な人の犠牲を、黙って見ていられるほど、私は薄情じゃない。

不思議だった。
人を殺しておきながらも生き永らえる事を幸せというこの町の人間達の心が。




誰かが死ねば、残された親しい人が悲しむ。

関係のない町の人々は自分達が死ぬ可能性がなくなったからと胸を撫で下ろす。


誰かを殺しておきながら。この殺しを正当化しながら。



最低だ。どいつもこいつも。

ここにいる者皆が。


私は血まみれの足で町の中心へ向かう。

いるんだ。多分、麻弥ちゃんが。

あそこには町長がいる。

恐らく町長は儀式をしきっている。

となると生け贄は近くにいる。

救うんだ、麻弥ちゃんを。

暴くんだ、ヒヒ様とやらを。

そんな人を殺すだけの化け物、殺してやる。


私は確信を持って走り出した。

化け物を倒す。殺してやる。


どうやって?そんなものは考えてなかった。


ただ、何も考えずに私は走り出した。
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