私の嘘は、キミのせい。



「あのさ、要───」
「奈々佳ー、行かなくていいの?」



……綾乃、

なんてタイミングの悪い。



「や、行く……けど、大輝は?」

「なんかトイレだってー」
「……そう、」



……仕方ない、説明とか諸々は綾乃に任せてもう行こうかな。相手を待たせたら悪いし。……嫌がらせとかかもしれないけど。


そんなことを考えながら爪先を方向転換させた瞬間、綾乃が耳もとで囁いた。



「……昼休み、私は要と待ってるよ」
「っ、ありがと」



要が一人になって、不自然にならないように。もしかして綾乃は、最初からそのつもりだったのかな。

それに───綾乃は、大輝のことで嫉妬したりしないのかな。

私は、綾乃の気遣いだってわかってるのに、今から要と綾乃が二人きりになることが、こんなにもモヤモヤするのに。

相手は綾乃なのに。親友なのに。大輝の彼女なのに。なんでモヤモヤしちゃうんだろう。綾乃のこと信用してないわけじゃないのに。


< 32 / 46 >

この作品をシェア

pagetop