君の手が道しるべ
しかし栞ちゃんは納得がいかなかったらしい。
シャッターが下りたあと、わざわざ大倉主査に事の次第を確認しに行き、ますます腹を立てて帰ってきた。
「もう、信じられないですよ! 池田産業さんが来たとき、大倉主査もたまたま席を外してて不在だったみたいなんです!」
「そうなの?」書類から目を上げ、梨花の席を見る。その視線の動きに気づいたのか、栞ちゃんが「大丈夫です。藤柳さん、外出中ですから」と言った。
「大倉主査も永瀬調査役もいないから、池田産業さん、いったん帰ろうとしたみたいなんですよ。でもそれを藤柳さんが引き留めて、応接室にこもっちゃって、最終的にはこれですって」
検印を済ませてある書類を、ぱんと手のひらで叩く。
「こんなのおかしくないですか? もともとは大倉主査と調査役の案件ですよね? なんでこんなこと平気でするんですかね、信じられない」
栞ちゃんが怒れば怒るほど、私は冷静になっていった。
脳裏によみがえったのは、あの薄暗いバーで暴言を吐いていった梨花の姿だ。
「わざわざ私の狙ってるとこ横取りして、いい気になってるんでしょ!」
と言い切った梨花。
ということはつまり、これは私への意趣返しなのだろう。
「もういいよ、栞ちゃん」
私が静かにそう言うと、栞ちゃんは驚いたように口をつぐんで私を見つめた。
「やりたい人にやらせたらいいじゃない。誰が取った数字でも、支店の実績には変わりないんだもん。池田産業さんだって、梨花の提案を気に入ってくれたんだからハンコ押してくれたんでしょ? それでいいじゃない」
「でも……」
栞ちゃんは納得がいかない顔をしていたが、やがて言った。
「わかりました。調査役がそう言うなら、私もそれでいいことにします」
シャッターが下りたあと、わざわざ大倉主査に事の次第を確認しに行き、ますます腹を立てて帰ってきた。
「もう、信じられないですよ! 池田産業さんが来たとき、大倉主査もたまたま席を外してて不在だったみたいなんです!」
「そうなの?」書類から目を上げ、梨花の席を見る。その視線の動きに気づいたのか、栞ちゃんが「大丈夫です。藤柳さん、外出中ですから」と言った。
「大倉主査も永瀬調査役もいないから、池田産業さん、いったん帰ろうとしたみたいなんですよ。でもそれを藤柳さんが引き留めて、応接室にこもっちゃって、最終的にはこれですって」
検印を済ませてある書類を、ぱんと手のひらで叩く。
「こんなのおかしくないですか? もともとは大倉主査と調査役の案件ですよね? なんでこんなこと平気でするんですかね、信じられない」
栞ちゃんが怒れば怒るほど、私は冷静になっていった。
脳裏によみがえったのは、あの薄暗いバーで暴言を吐いていった梨花の姿だ。
「わざわざ私の狙ってるとこ横取りして、いい気になってるんでしょ!」
と言い切った梨花。
ということはつまり、これは私への意趣返しなのだろう。
「もういいよ、栞ちゃん」
私が静かにそう言うと、栞ちゃんは驚いたように口をつぐんで私を見つめた。
「やりたい人にやらせたらいいじゃない。誰が取った数字でも、支店の実績には変わりないんだもん。池田産業さんだって、梨花の提案を気に入ってくれたんだからハンコ押してくれたんでしょ? それでいいじゃない」
「でも……」
栞ちゃんは納得がいかない顔をしていたが、やがて言った。
「わかりました。調査役がそう言うなら、私もそれでいいことにします」