君の手が道しるべ
突然の平日休みをどう過ごしたらいいかわからず、私は街中をふらふら歩いていた。

 電車はまだ通勤ラッシュで混み合っているだろう。
 その中に身を投じる元気もないので、とりあえずラッシュの時間帯が終わるまでどこかで時間をつぶそうと思い立つ。幸いにもすぐ近くにカフェを見つけ、私はふらつく足どりでカフェに逃げ込んだ。

 暖かいカフェオレをオーダーし、窓際のソファ席にゆったりと腰を下ろす。運ばれてきたカフェオレを両手で包むように持つと、自分の手指が思いのほか冷えていたことに気づいた。

 大きなため息をひとつついて、カフェオレを口にすると、緊張しきっていた心が少しだけほぐれたような気がする。がちがちに固まっていた肩から、ゆっくりと力が抜けていく。全身がこんなに硬直していたなんて、思いもしなかった。

 窓の外をぼんやりと眺める。こうして見ると、通り過ぎるひとたちの足どりはとても早い。いつもは自分もその中にまぎれて、同じような早足で歩いているのだ。

——進むべき方向もわからないまま。

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