君と描く花言葉。

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「それでねー!昨日あの後彼氏とショッピングしてさー」



上機嫌の高ちゃんは、今日も彼氏の話題で盛り上がっている。



お弁当に入っていた唐揚げを頬張りながら私は笑顔で聞いているけれど。


…その話、多分展開予想できるよ。



だって高ちゃん、いつもは付けてないリップ付けてるんだもん。


彼氏にリップ買ってもらったんだよね?



淡いオレンジ色の唇が、私の目の前で弧を描いている。



でも高ちゃん、この前ピンク色のが欲しいって言ってなかったっけ?


綺麗なモデルさんがたくさん載った雑誌を、羨ましそうに見ていた高ちゃんの姿が目に浮かぶ。



「じゃじゃーん!リップ買ってもらっちゃった!」


「おぉ〜!」


「彼氏が高子にはオレンジが似合うーって言ってくれてさー!ピンク色とかどうでもよくなっちゃうよね〜」



…どうでもよくなるんだ。



私はうんうんと相槌を打って、今度は卵焼きを口に入れた。


卵焼きって美味しくて好き。


私の家のやつはチーズが入っていて、普通の卵焼きじゃないんだけど。


私はそれが好きで、よくお母さんに作ってもらう。



「…エリカの卵焼きってさ、美味しそうだよね」


「うん?美味しいよ。チーズ入ってて」


「だよね!?なんか他のと違うなーって思って!」


「…一個食べる?」


「いいの?やった!ありがと!」



お弁当箱を差し出すと、高ちゃんは私の卵焼きをさらっていく。



…こういう話題、本当はちょっと苦手。


あげなきゃいけないみたいな、そんな雰囲気で。



別にお母さんに言えばいくらでも作ってもらえるし、高ちゃんにそんなつもりは全然ないのも知ってる。



私が気にしすぎなんだろうなあ、多分。



「ん〜!美味しい!今度あたしもお母さんにチーズ入れてって頼んでみよ!」


「ふふ、よかった」



高ちゃんが美味しそうに食べてくれて、少しホッとする。



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