この空を羽ばたく鳥のように。
………なさけない!なんと情けない!!
なんてことなの!?
喜代美が悪く言われるだけならともかく、父上まで愚弄されるなんて!!
拳をギュッと握りしめる。
――――『臆病者』!
会津武士の子弟は、決して臆病者などと言われてはならない。
武士は常に勇敢であり、強く誠実でいなければならないからだ。
けして卑怯な振る舞いなどしてはいけないからだ。
その心身を鍛えるために、毎日 日新館に通っているのだ。
臆病者と言われることは、武士の恥だ。
情けない。津川の跡継ぎがそんなふうに嘲笑されるなんて。
このことが父上の耳朶に触れたら、どれほど落胆なさるだろう。
………地べたに小さな丸い点がいくつも描かれる。
私はうつむきながら、悔し涙を流していた。
※愚弄……人をばかにして、からかうこと。
※耳朶に触れる……聞き及ぶ。人づてに聞いて知る。
※落胆……期待どおりにならなくて、がっかりすること。失望すること。
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